2012年最後の開館日

12月 28th, 2012

みなさんこんばんは。

学芸員Wです。

今日は今年最後の開館日。

展示解説員Tさんが、予科練1期生の3時間にも及ぶインタビューの

文字起こしを完了したことが今日のハイライトでした。

 

最後のお客様をお見送りして、2012年の業務も無事に終了です。

展示解説員のみなさんも笑顔で帰宅していきました。

ひとり、またひとりと年末のご挨拶を交わしてお別れするのは

なんとなくさみしくなるものです。

ひとりぼっちの事務室でブログを更新しながら、

今年一年も早かったなー・・・と考えています。

 

  

さて、今日の新聞等でご覧になった方がいらっしゃったら嬉しいのですが、

先日、アメリカから旧日本兵のものと思われる日章旗が寄贈されました。

 

 

天田町長(左)と寄贈者の竹田さん(右)です。

 

はるばるアメリカからこの日章旗を持ってきてくださった竹田さんは、

30年以上前にアメリカに渡り、ノースカロライナ州で子どもたちの教育に

長年携わっていらっしゃいます。

 

事の発端は去年の夏。

竹田さんの娘さんが、東日本大震災のチャリティー絵画展を開いたところ、

会場を訪れたアメリカ人の女性から、この日章旗を手渡されたそうです。

「この旗はおじが戦時中から大切に保管してきたものです。日本の旗だから、

日本人のあなたにお返しします。」

とおっしゃり、詳しいことは語らないまま竹田さんの娘さんに渡したそうです。

旗はしばらく娘さんのところにありましたが、今年の夏、竹田さんがニューヨークに

住む娘さんを訪ねたところ、

「パパ、ケリーさん(旗を渡してくださった女性)のためにできる限りのことをしてあげて!!」

と、この旗を頼まれたそうです。

竹田さんはその場で、旗を持って日本に帰国することを決意なさいました。

 

この時のことを、メールで私に教えてくださいました。

 

「私が思うことは、ケリーさんは悲惨きわまる大震災の様子をテレビのニュースで見ながら

心を動かされて、このような善意と哀れみに満ちた決断に至ったのだと思います。

それにしても彼女のこの好意は、日米両国を結ぶ親善の賜物です!

かつては敵同士で戦った国の人々が世代を超えて心を分かち合えることは、

真の国際親善であり、これほど尊いものはありません。

私はその親善の橋渡しの役目を授かったことに、大きな喜びを感じております。」

 

 

70年近くもアメリカで保管されていた旗を日本に返すため、

竹田さんは、日本の友人に相談したり、行政機関や博物館など

さまざまなところに国際電話をかけて調査をなさいました。

その最中に当館をお知りになったそうです。

 

11月の初旬だったと思うのですが、ちょうどファーストコールを受けたのが私Wでした。

竹田さんの熱心なお話をうかがい、旗に墨書された「岡崎航空隊」には

予科練生がたくさん入隊しているという縁もあることから、受け入れを決め、

準備を進めてまいりました。

 

竹田さんはクリスマスにあわせて帰国。

 日米両国をつなぐこの日章旗はまさに「ギフト」だから、といって、

クリスマス期間中の12月26日に寄贈してくださいました。

 

 

寄せ書きされた日章旗というのは、通常、入隊や出征時に

親しい人が寄せ書きをして贈ることが多いので、

旗には贈られる人の名前が書かれているものが一般的です。

でも、竹田さんがお持ちになった日章旗には人名らしきものが書かれておらず、

かわりに 「武運長久」や「岡崎航空隊」などのほか、「ワシントン」「ハワイ」

「グアム」「名古屋」「レイテー(レイテ?)」「オールマーク(オルモック?レイテ島にある

湾の名前です)」などの地名が墨書されている、という大変珍しいものです。

 

 

 

戦時中から旗を保管していたという方と直接連絡することができないため、

どのようにして所持するにいたったかの詳細がまだわかりませんが、

竹田さんの娘さんに旗を渡してくださったケリーさんが、持ち主だったおじさんに

聞き取り調査をして知らせてくださることになっています。

 

この旗がどのようなドラマを持っているのか、これから明らかになる

事実を心待ちにしているところです。

 

また、旗を所持していたアメリカの方は、元の持ち主を探しているそうです。

どんな小さなことでもかまいませんので、何かお心当たりがある方は

予科練平和記念館(029-891-3344)までお知らせください。

よろしくお願い申し上げます。

 

 

2012年も残すところあと3日。

みなさんにとってどのような1年だったでしょうか。

 

前述の竹田さんは、娘さんのチャリティ絵画展で得られた寄付金を持って

宮城県石巻市の大川小学校を訪ねたそうです。

北上川沿いに建っている大川小学校は、東日本大震災時に

川をさかのぼってきた津波によって大きな被害を受け、

全校児童の7割が死亡・行方不明になったところです。

 

被災地の復旧、復興にはまだまだ課題が山積しているなか、

被災地以外のところでは、早くも大震災の記憶が過去のものになりつつあると聞きます。

竹田さんは、被災地のこと、そして原発事故のことをとても心配なさっていました。

 

時計の針が戻ることはありませんが、まもなくやってくる2013年が、

今なお辛い状況におかれている方々にすこしでも優しい日々でありますよう

願ってやみません。

 

 

年末のお忙しいなか、私の拙い文章にお付き合いくださいまして

本当にありがとうございました。

みなさんのおかげで、こうして記念館での日常、というか、私Wのつぶやき的

散文を綴らせていただいていることに、心から感謝しております。

来年はもう少しおもしろい記事が書けるといいな、と思っておりますので、

これからもお目通しいただければ幸いです。

 

 

予科練平和記念館は明日12月29日(土)~1月3日(木)まで

年末年始休館になります。

1月4日(金)からは、通常通り開館いたします。

来年も、みなさんのお越しを心よりお待ち申し上げます。

 

それでは、どうぞよいお年をおむかえください!