みなさんこんにちは。
来月開館するルーブル美術館分館の内部が公開されて
大興奮の学芸員Wです。
フランス・ランスにできたこの分館は、建築界のアカデミー賞といわれる
プリツカー賞を受賞した建築家 妹島和世さんと西沢立衛さんのユニット
「SANAA(サナー)」が設計したものです。
ガラス張りの明るくてかろやかな空間の写真が公開されましたが、
ここがこれからどんなふうになっていくのか、楽しみに思っています。
美術の本家で日本人の建築家が歴史あるルーブルの分館を
担当するって、本当にすごいことですよね。
妹島さんが茨城県日立市のご出身であることも、私的に勝手に嬉しく
誇らしく思っています。
時間ができたら、日立駅はじめ県内にある妹島さんの建築を
巡ってみたいなと思っています。
さて、今日は11月3日。文化の日です。
秋がだんだんと深まってきましたね。
ここ茨城は11月上旬から中旬にかけて紅葉がピークです。
予科練平和記念館でも紅葉が進んでいます。
館前の桜の木の葉っぱが、とても素敵な秋色に染まってきました。
このもみじの木から種が飛んでいるらしく、毎年付近の芝生の中に
小さなもみじがでてきます。
芝と一緒に刈られてしまうのがかわいそうなので、今年出ていたもみじBabyたちは
展示解説員Oさんに助け出されて、Oさん宅で一時預かりとなっています。
Oさんは植物を育てるのがとても上手で、もみじたちも少し大きくなってきたそうですので、
時期をみて親もみじの近くに移植しようと計画しています。
何十年か後に、ここがもみじの名所になっていたらすてきですね、と二人で妄想しています。
さて、先日夏季特別展が終わり、展示撤収のための臨時休館日を利用して、
職員研修を行いました。
予科練平和記念館と同じ乃村工藝社さんが設計なさった
戦傷病者の記念館「しょうけい館」と、「遊就館」の2館をまわって
館内案内や施設、サービスなどについて勉強しました。
普段はお客様をお迎えしてご案内する立場の私共ですが、
お客様になってみて案内をしていただくと、細かいところにいろいろと気付きます。
展示解説員さんたちもそれぞれ思うところがたくさんあったようです。
私も一日添乗員さんの真似事をさせていただき、その大変さと気遣いを
身をもって感じました。
やはり何事も実際に自分でやってみないとわからない事がありますね。
今回の研修はとても勉強になりました。
それから、私Wは恥ずかしながら「しょうけい館」さんへ今回はじめて
うかがいました。
展示の見せ方もよく考えられていて素晴らしいし、悲惨さだけを強調するのではなく
戦傷病者の方々の辛さ、悲惨さを十分に受け止めた上で、
かつて起こった事実を静かに語りかけるような作りにとても共感しました。
学芸課長さんにいろいろとお話をうかがいましたが、おもしろかったのが、
野戦病院を再現したジオラマの話です。
手掘りの洞窟の中に運び込まれる負傷兵や麻酔もなく手術される兵士、
手当てをされてぼうぜんと座り込む兵士などの等身大の人形がいるのですが、
リアルさを出すために痩せ型のボクサーをモデルにして動きを再現してもらい、
筋肉の動きなどを確認しながら作ったそうです。
実際に南方戦線で軍医をなさった方に監修してもらって、
洞窟の壁面も、実際に野戦病院だったところから型を採取して再現したそうです。
知らなければ「すごくリアルだな」という感想を持つところですが、
つくられた背景をうかがうことで、戦傷病者の事実をどうやったら
伝えられるか、という製作者の思索やアイデアに思いを馳せることができました。
しょうけい館さんは、限られたスペースの中で空間をとてもうまく使って
いらっしゃるので、展示手法的に勉強になりましたが、それ以上に、
戦傷病者の方々のデータベースが充実していること、毎年体験者の証言映像を収録し、
DVDにして公開、貸出をしていること、戦傷病者に関係する図書を体系的に
収集していらっしゃることなど、予科練平和記念館で(というか私の中で)
課題となっている部分がきちんと整理されていることに感銘をうけました。
博物館は、資料を見せる場というだけではなく、未来へ記憶を残すデータセンターとしての
役割もあります。
戦争を体験された世代の世代交代が進んでいるなかで、
今残すべき、集めるべき資料はたくさんあるということを改めて思いました。
今日の文化の日、みなさんもぜひ博物館におでかけになってみてはいかがでしょうか。
作り手がどのように資料を見せようとしているか、という視点で展示をご覧いただくと、
また違った楽しみ方ができるかもしれませんね。
しょうけい館