寒さに遅れがちで、私たちの気を揉ませた桜の開花もわずか1日の気温上昇でパッパッと進み、過ぎてみればこの阿見町でも来年を待たねば桜とは再会が叶わなくなりました。いつもながら、あっと言う間の出来事でした。
この予科練平和記念館にも多くの桜が植樹されています。開館2周年を過ぎたばかりの当館に似合わしく、まだ小学生というような若木ですが、この1年でもずいぶん大きくなりました。あと数年後にはきっと、阿見町内でも有数の桜の名所になることでしょう。どうぞご期待ください。
この春、多数の方にご来館いただいております。ありがとうございます。
今回は、そのうちの何組かをご紹介したいと思います。
去る3月末、まだ桜の蕾も堅い時でしたが、北海道立遠軽高校ラグビー部の皆様にご来館いただきました。
遠軽の近くには北見、網走などの町があります。近年、北見周辺ではラグビー部の夏合宿が盛んに行われることが知られていますが、遠軽高校も過去7回の全国大会(花園)出場を誇り、2010年2011年と北北海道代表として連続出場を果たしている強豪とのこと。旧制中学の例に漏れず、文武両道を果たし多数の逸材を輩出している学校のようです。今回は埼玉県で開催された選抜大会に出場する旅の途中にお立ち寄り下さいました。
部員の方々は元気溌剌でしたが、礼儀をわきまえ、たいへん好感をもてる「好青年」たちでした。気は優しくて力持ち…、現代でも男の徳目の1つと考えられている価値を体現している人々でした。これからの日本を支える若者に、予科練平和記念館もエールを送ります。
予科練では「闘球」というほとんどラグビーと変わらない球技が科目としてありました。陣取りゲームの要素をもつラグビーは実戦に似通うと考えられ、チームワークの鍛錬、注意力・突進力の訓練、また犠牲的精神を養うなどのために盛んに行われました。
遠軽高校ラグビー部が来館された日には、元予科練生の戸張礼記氏(当館歴史調査委員)が居合わせ、一緒に記念撮影となりました。当館にとってもよい思い出の一コマです。
また、つい先日には茨城県知事橋本昌様にもご来館いただきました。近隣へのご出張の合間を縫ってお越しいただき、たいへんありがたく思います。
橋本知事は歴史にもご関心が高いことを以前何かの機会に知りましたが、ご多忙にもかかわらず、約1時間、熱心にご見学いただきました。
私たちは、やがてほどなく戦争を実体験した方々を失い、先人が残してくれた本や映像などでしか学べない時代を迎えます。
私がこの予科練平和記念館に勤務するようになって改めて考えたことは、私のような戦争を知らない者が、何かをきっかけに実際に戦争、すなわち人殺しを体験し、その結果「やっぱり戦争をしてはだめだ」などと思うようでは、先の戦争で亡くなった方々に申し訳ない、ということでした。
戦争を知らない者が学ぶことで戦争のない社会を継続させることは、これからを生きる者の最も大きな使命の1つと私は考えています。しかし、生易しいことではないでしょう。それでも最大限に想像力を働かせ、隣人愛の精神をもって、先人が残してくれた偉大な遺産を引き受けなければなりません。
茨城には予科練平和記念館があるということを多くの方々に知っていただきたいと私たち職員一同は願っています。そのためにも日々、私たちは精進を重ねていきたいと考えています。
ご来館いただき、何かを感じ取っていただいた方々におかれましても、失われゆく記憶を取り戻す機会の大切さを多くの方にご伝道いただければ幸いに存じます。