梅が咲かない、桜の蕾もまだ堅い、などと言われていましたが、急に暖かくなってきました。春が来たかな、という気持ちになります。
先日、彼岸を迎えて昼夜同じ時間になったとき、私は希望を感じました。と言うのも、冬至を過ぎ日一日と昼間が延びることを実感しているときも、朝日が昇ってくる遅さに憤りに近い感情を抱いていたからです。「なぜ6時にもなって未だ暗いんだ?」出勤の準備を暗闇で始めるのはうら寂しいものでした。
しかし、隠していた頭が引き出されるように夜明けも早まり、自分の起床を窓越しに待っていてくれるその朝の光が頼もしく、また嬉しく感じられるようになってきたのでした。
これからは昼間が長くなるだけではなく、日々、光が満ち溢れてくるでしょう。明るく、暖かく生きられる喜びを感じるとは、まあ、人間も生き物である証拠でしょうか。冬を越え、予科練平和記念館へご来館いただくお客様の数も増えてきました。ありがたいことです。
と、こうして3月も末を迎えました。年寄り臭いことを言うようですが、早いものです。つい先日、正月だったような気がします。
過去1年と別れを告げる新年への橋を私たちはすでに渡っています。この別れの時、そして新しい出会いを迎えるこの時は「2つ目の橋」と言えるのではないでしょうか。
新年を迎える架け橋は皆一様の方向を向いていると思うのですが「2つ目の橋」は向かう方向が人それぞれなのかもしれません。
昔、末法の世の到来が信じられ、現在呼び習わされている「浄土式庭園」が盛んに造られた時代がありました。愛憎が蠢(うごめ)く濁(じょく)世、つまり此(し)岸から離れ彼岸、すなわち極楽浄土へ向かう途中にはやはり2つの橋が架けられました。その2橋を結ぶ中島は蓬莱島(夢の島)とも言われ、人々は夢の島に到達すると極楽浄土へ向かうべく「2つ目の橋」を渡ったのです。
新年を迎えてからのこの3ヶ月に皆さんはしっかりと夢を溜めることができたでしょうか?「2つ目の橋」を渡ろうとする今、行き着く先が幸い多きことをお祈りいたします。
予科練平和記念館も3年目の飛躍という彼岸へ向けて、勢いよく走り出そうとしています。どうぞ、御期待ください。
皆様のご来館を心よりお待ちしております。