花咲くとき

5月 5th, 2011

    明日は立夏、暦の上でも夏を迎えます。桜花が去るやいなや新緑が萌え出で、百花繚乱の時をも迎えました。皐月の爽快な空気に触れると、五感がうち震える季節を再び迎えられた喜びが溢れます。

 

   今春に経験した大地震は、あることが当たり前であった事柄を私たちが見直す契機となりました。大災害の跡を見るたびに、そこに宿る人の思いをひしひしと感じずにはいられません。今生きている私たちは生きる喜びを素直に享受し、そして子々孫々に遺すべき社会を再び築きあげていきましょう。

 

  花々を一斉に開かせた初夏のこの青空は、かつての予科練生が大志を抱いて駆け巡った空と変わらないのかもしれません。はるか昔に、美しい月を見て思いのつながりを恋人たちが信じたように、この蒼空を仰ぎ見る私たちに、先人たちの真摯にして熱い思いが降り注ぐことを信じたいと思います。

 花咲くとき、それは心を鎮めるとき。また、生きるものが動き始めるときです。

 花々と緑に囲まれた当記念館へのご来館を心よりお待ちしております。

昭和の日

4月 29th, 2011

みなさんこんにちは。

今日は「昭和の日」。昭和天皇のお誕生日です。

「国民の祝日に関する法律」によれば、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を

顧み、国の将来の思いをいたす」日なのだそうです。


いつの日か3月11日も、この辛さを忘れずに、たくさんの人が安心して暮らせる国になるよう

思いをいたす記念日になるのでしょうか。


昨日、東日本大震災で亡くなられた多くの方が四十九日をむかえられました。


心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

記念館のぼたん桜も、空に向って何かささやくように小さく揺れていました。




話は変わりますが、NHK朝の連続テレビ小説「おひさま」。

皆さんはご覧になっていらっしゃるでしょうか。

先日、主人公陽子の兄茂樹が、予科練を受験する決意を父親に伝えるシーンが

ありましたね。


実はドラマの撮影にあたり、予科練平和記念館も少しですが協力させていただいております。

茂樹に関するシーンで手紙や写真などが出てきたら、ちょっとご注目くださいね。


当館に調査にいらっしゃったご担当の方も、とても熱意を持ってドラマ制作にあたっておられました。

私たちも、こんな素敵なドラマに少しでも関わることができて、とても光栄です。

美しい自然の中で少しずつ大人へと成長していく陽子たちは、

やがて来る太平洋戦争という大きな渦の中で、

どのように生きていくのでしょうか。

今この不安な時代を生きる私たちにも、何か共通するものがあるかもしれません。

 皆さんも、朝8時からの15分、ぜひご注目ください。


連続テレビ小説「おひさま」HP

http://www9.nhk.or.jp/ohisama/



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さて、これまで、私学芸員Wがこのブログを担当してまいりましたが、

来月より、新しく配属されました学芸員Aも登場することになりました。

今までとはまた違った視点で、予科練平和記念館のあれこれを

皆さんにお届けしてまいりますので、

どうぞお楽しみに。


予科練平和記念館は、ゴールデンウィーク中休まず開館しております。

JAF会員証・いばらきキッズクラブカード・漫遊いばらきファンクラブ会員カード・

SDカードなどご提示いただくと入館料が割引になるカードが増えましたので、

お持ちの方はぜひご利用ください。


第3回所蔵資料展がはじまりました

4月 26th, 2011

みなさんこんにちは。

今日の予科練平和記念館の窓からは、流れる雲の隙間から

青灰色の空がのぞいているのが見えます。

時々鳥が横切っていきます。


今日はチェルノブイリ原発事故から25年目の日だそうです。


この間の日曜日でしたでしょうか。記念館に福島からの

お客様がいらっしゃいました。

ご自宅が原発から20キロ以内だそうです。


もう、戻れないんだよ・・・。


とおっしゃっていました。


何とも申し上げることができず、いたたまれない気持ちでいっぱいでした。


記念館の窓口では、東日本大震災義援金への募金箱を置いておりますが、

現在までの6日間で、47,688円が集まりました。ご協力ありがとうございます。

みなさんのお気持ちは、必ず、被災されて苦しんでおられる方々の

お役にたつものと思います。


先日、記念館でも職員が少しずつ出し合って

茨城新聞社さんを通じて寄附させていただきました。


みんなで、できることを続けていく。

とても必要で、とても良いことだと思います。




さて、本日より第3回所蔵資料展「予科練生の資料館―銀田コレクション展」が

はじまりました。

震災の影響で、1ヶ月遅れでのスタートになります。


今回は、甲種第15期生だった銀田捷(まさる)さんが、戦後50年かけて収集していた

旧海軍関係の資料や図書、模型など205点を展示しています。


銀田さんは、新潟県の自宅の2階に収集した資料約780点を展示しており、

仲間からは「銀田予科練資料室」と呼ばれていたそうです。

残念ながら、ご本人は平成8年にお亡くなりになりましたが、

残された資料は、7年後の平成15年に奥様より阿見町に寄贈されました。

七畳半という広さだった銀田資料室に少しでも近い雰囲気でご覧いただけるよう、

会場を狭くして資料を展示しています。




制服類をケースに入れずそのまま展示していますので、

会場内はそこはかとなく古い衣類のにおいがして、なんとなくリアルな展示になっています。


甲種第15期生は1944(昭和19)年9月から、4回に分けて36,717人が入隊しています。

戦局の悪化により訓練は途中で中止されてしまい、練習生は航空隊の警備にあたったり

本土防衛のための陸戦隊となったりしました。

そうした経過があるぶん、予科練や海軍、飛行機などに対して強い想いが

あるのかもしれません。

彼らがどのような気持ちで戦後を過していたのか、想像していただけたらと思います。


会期は6月12日(日)までです。

ご来館の際にはぜひご覧下さい。

館のとなりの公園のつつじもきれいに咲き始めました。



~開館に思う~

4月 22nd, 2011

平成23年4月19日(火)大震災発生より40日振りに
開館いたしました。

“待ちに待った開館”

1ヶ月余り待機していた解説員の皆さんが水を得た魚のように
生き生きと復活いたしました。更なる活躍を期待しております。

1週間程前の決定でありましたので各方面へのお知らせが
滞ったことが残念に思われました。
しかし、開館日4月19日(火)40名様、そして
4月20日(水)は何んと140名のお客様がおいでになりました。

“待ってたよ、良かったね、これからも頑張って下さい”と
お客様より言葉を頂きました。誠に有難く、とても感激いたしました。

この感激を忘れずにこれからも多くのお客様が来館されますよう
日々精進してまいりますのでどうぞご支援よろしくお願いいたします。

また、大震災による被災地の皆様におかれましては
まだまだ寒い日が続くようですのでどうぞお体をご自愛のうえ
普段の生活が一日でも早く訪れることをお祈り申し上げます。

館 長 糸賀富士夫

共に生きよう

4月 21st, 2011

みなさんこんにちは。

今日はうす曇。すこし肌寒い予科練平和記念館です。

茨城新聞、常陽新聞朝刊に記事を載せていただいたおかげか、

昨日はたくさんのお客様がお見えになりました。

ありがとうございます。


大きな被害を受けた地域の方たちは言わずもがなですが、ここ茨城でも

まだまだ余震が続き、不安な日々を送っていらっしゃる方も多いと思います。

当館では、皆さんを応援する気持ちもこめまして、

4月26日(日)まで無料でご覧いただいております。

よろしければ、ぜひお運びください。



また、窓口では、東日本大震災義援金の募金も行なっております。



お預かりした支援のお気持ちは、日本赤十字社の東日本大震災

義援金に全額寄附させていただきます。

ご来館の際には、ご協力いただけましたら幸いです。


窓口で、本日は無料でご覧いただけますとご案内すると、

じゃあ、チケット代人数分ねとおっしゃって、その金額を寄附してくださる

お客様がたくさんいらっしゃいます。

帰りがけに入れてくださるお客様もいらっしゃいます。

とても嬉しいですね。


・・・と、嬉しそうに伝えてくれる窓口担当の展示解説員さん。

お客様の善意で、我々スタッフも元気をいただいております。

本当にありがとうございます!



そういえば、海外で活躍する日本のサッカー選手が出演していたCMが

ひとときよくテレビで流れていましたが、皆さんはご覧になられたでしょうか。

ドイツ・シャルケ04で活躍している内田篤人選手のシャツに、

「共に生きよう」と書かれていたのが印象的でしたね。

「頑張れ」とか「信じてる」という言葉は、なんとなく少しクールな感じが

しないでもないのですが、

「共に生きよう」は、苦しみや悲しみを引き受けて分かち合う、

とてもあたたかくて強い言葉だなと思って、感動しました。



予科練平和記念館で募金をしてくださるお客様のお気持ちも、

同じ日本に「共に生きる」ということの一つの表れなのだと思います。



シャルケは、現在欧州チャンピオンズリーグで4位。

インテル・ミラノの長友選手との日本人対決は話題になりましたね。

(ちなみにこの試合の観客数は5万3千人とか・・・阿見町の人口を軽く超えています。)


内田選手は以前鹿島アントラーズ(本拠地:茨城県鹿嶋市)に所属していたこともあり、

こうして世界を相手に活躍している姿を見られるのは、いち茨城県民としてとても嬉しいです。



アントラーズのホームスタジアムである「鹿島スタジアム」も、残念ながら

今回の地震で被害を受けてしまいました。

 日本のサッカー界にもいろいろと影響がでているようですが、

厳しい世界で頑張る内田選手の姿が、日本中の人に勇気を

与えてくれるのみならず、

鹿島でプレーする選手や地元の人たち、Jリーガーやサッカー選手を夢見る

たくさんの子どもたちにも大きな励みになっていると思います。

 子どもが好きだというやさしい内田選手。

26日(火)のマンチェスターユナイテッド戦、応援しています。



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さて、話しはかわりますが、予科練平和記念館のラウンジに新しい絵本がはいりました。



色とりどりの表紙が、ラウンジにいろどりを沿えてくれています。



一見こわいお話しかなと思いきや、最後はほのぼのしてみたり、

かわいらしい絵につられてみていると、とても重いテーマを扱っていたり。

絵本の世界は奥が深いですね。

個人的には、レオ=レオニの「あいうえおの き」が素敵だなと思っています。


今、被災地に絵本を送るプロジェクトが行なわれています。

絵本はお子さんの心を安定させてくれるそうです。

大人の心も癒してくれそうですね。

ラウンジはチケットが必要ありませんので、どうぞお気軽に読みにいらしてくださいね。

お待ちしております。


再開日が決まりました

4月 15th, 2011

みなさんこんにちは。

ここ何日か、福島~茨城~千葉~長野~新潟あたりで

大きな余震がありましたね。

みなさんのいらっしゃるところは大丈夫でしょうか。

まだまだ予断を許さない状況が続いています。

どうぞお気をつけてお過ごし下さい。


さて、予科練平和記念館は、東日本大震災後長らく臨時休館させていただいておりましたが、

4月19日(火)より再開の見通しとなりました。

ご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。

なお、4月19日(火)から24日(日)までは入館料が無料となりますので、

この機会にぜひご来館ください。



今、予科練平和記念館は春まっさかりです。

この写真は3日前に撮影したものです。




今日はこんな感じです。

ここしばらく暖かく、風が少し強かったので、花びらが芝生に散ってしまっています。

その代わり、若葉が顔をのぞかせてきました。




館の裏手の臨時駐車場の土手から、たくさんのつくしが顔を出していました。



近くのハス田では、ぽかぽかの太陽のもとで白鷺がじっと佇んでいて、

どこからかカエルの鳴き声が聞こえます。


東北からも桜の便りが届くようになりました。

春の暖かさと命が芽吹く力強さが、少しでも被災された方の心をあたためてくれますように。


館長日記

4月 13th, 2011

大震災発生より一ヶ月が過ぎました。
被災地はまだまだ大変な生活をしております。断水、停電、食料品と燃料の
不足、生活に必要なものが不自由しております。

ここ予科練平和記念館周辺は、特に大事には至らなかったので、かなりの
物資が流通するようになりましたが、物の有難さ、節約の大切さを身を持って
体験しました。

“喉元過ぎれば、、、”と申します。

予科練生が国のため、家族のため、そして平和のため身を挺して戦地へと
飛び立った事を考えますと、私たちは被災地の人々のことを思い、
心をひとつにし、一日も早い復興を願わずにはいられません。

霞ヶ浦の水もぬるみ釣り人を見かけるようになり、春霞のなかにうっすらと
筑波山が姿をとどめております。
また、海軍道路の三本の大木の桜は、今年も綺麗に満開となり、当時を
偲ばせております。

“必見、、、”

大震災により皆様には大変ご心配をお掛けしましたが、平成23年4月19日より
開館することとなりました。
多くの人たちに予科練生の思いを届けたいと思います。
職員一同ご来館をお待ちしております。

平成23年4月13日  
館長 糸賀 富士夫

 

桜が咲きました

4月 7th, 2011

みなさんこんにちは。

新年度を迎えて、いかがお過ごしでしょうか。

新しい学校、新しい職場、新しい部署などで新たな生活を

スタートさせた方も多いことと思います。


予科練平和記念館でも、館の建設に携わっていた職員が異動になりました。

準備段階から担当していた方でしたので、とても残念ですが、

新たに迎える職員とともに頑張っていきたいと思いますので、

今後とも予科練平和記念館をよろしくお願いいたします。



さて、ここ2~3日春らしい暖かい日が続いたおかげで、

予科練平和記念館でも桜が開花しました。

なんだかすごい構図の写真になってしまいましたが・・・こんな感じです。



まだ1分咲きといったところですが、今日もぽかぽかとあたたかいので、

ブログを書いているこの時にも、まさに花開いていくつぼみがあるかもしれません。


冬の間、枯れた色になっていた周りの芝生にも、新しい葉が少しずつ

顔をのぞかせてきました。

あたたかさの違いなのか、縁石に近いほうから色が変わってきています。



目に見える春がきてくれたことが、本当にうれしいです。


福島、宮城、岩手では、桜の開花予想が4月20日ごろとなっています。

東北に桜の便りが届く頃には、より多くの方に少しでも日常が戻っていますよう、

ニュースを見て毎日感じる不安や胸の痛みが少しでもなくなっていますよう、

祈っています。


春だといふ

3月 31st, 2011

 みなさんこんにちは。

東日本大地震から、20日が経とうとしています。

毎日様々なニュースが飛び交う中、各地の復興を伝えるニュースも

少しずつ多くなってきました。

その一方で、東京電力福島第一原子力発電所では、今この時も

厳しい戦いが続けられています。

ガソリンがなくて、十分な支援が届かない避難所や地域がまだまだたくさんあり、

長引く避難生活で体長を崩される方も少なくないようです。

先の見えない不安が、長く雪を降らせる灰色の雲のように

気持ちのどこかを覆っているような感じがします。


そんな中、先日東京で桜が開花したとのニュースがありました。

3月11日以降、すっかりそうした感覚が抜け落ちてしまっていましたが、

気がつけば、確実に春がやってきていました。

みなさんも、まわりに春の訪れを感じていらっしゃるでしょうか。


予科練平和記念館に植えられた桜も、蕾が少しずつふくらんでいますが、

まだまだ冷たい風が吹いているので、しっかり重ね着をしている感じです。



みなさんに開花のニュースをお届けできるのは、もう少し

先になりそうです。



桜といえば、3月25日付け読売新聞の「編集手帳」をお読みになった方も

多いのではないでしょうか。

今回のブログでは、そこで引き合いに出されていた山村暮鳥の詩を

ご紹介したいなと思います。



「櫻」


さくらだといふ

春だといふ

一寸(ちょっと)、お待ち

どこかに 泣いている人もあらうに



山村暮鳥(やまむら ぼちょう)は、明治大正期に生きた詩人であり、

キリスト教の伝道師として東北から茨城にかけて歩いた人です。

詩の中に、あたたかく、のどかな田舎の風景を多く読み込んだ暮鳥は、

その生涯を、今度の津波で大きな被害を受けた茨城県大洗町で閉じています。

まさに今回地震の被害にあった地域を見、その足で歩いてきた暮鳥の詩の中には、

もしかしたら失われてしまったかもしれない美しい風景が

永遠に刻まれているとも言えます。


お花見自粛論の賛否にしても何にしても、感じ方は人それぞれでよいと思いますが、私

個人としては、これから桜を見るたびに、この詩を思い出すような気がします。

また、その気持ちを形にして、少しでも避難生活を続けている方に届けたいと思います。



さて、記念館の近くではこんな春の訪れも見られます。

予科練平和記念館の前の通り、旧125号線を1㌔弱東へ向ったところの風景です。




菜の花畑の奥が霞ヶ浦で、この写真には入っていませんが、

空気が澄んでいる日には、左方向に筑波山も見えます。

富士山には月見草が似合うかもしれませんが、

筑波山には菜の花が似合うような気がします。

もう少し暖かくなると、菜の花1本1本ががもっともっと大きくなって、

暮鳥のこんな詩がぴったりくるような眺めになります。



「風景」


いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

かすかなるむぎぶえ

いちめんのなのはな


これから桜に気持ちが向きがちですが、

お近くにお越しの際には、ぜひこの菜の花もご覧になってくださいね。

このブログでも、できる限りご紹介していきたいと思います。



明日から新しい年度がはじまります。

東日本大地震から3週間目の日でもあります。

今日よりも、少しでもよい明日になるように、毎日願っています。



予科練平和記念館は明日以降も当面の間休館となり、

みなさんには大変ご迷惑をおかけしております。

開館日程は、決まり次第館のホームページのほかお電話でもご案内いたしますので、

お手数ですがご確認いただけましたら幸いです。


お隣の陸上自衛隊土浦駐屯地武器学校内の雄翔館(予科練記念館)と雄翔園は

自衛隊正門からお入りいただけます。(9:30~16:30)

詳しくは、陸上自衛隊土浦駐屯地武器学校(℡:029-887-1171)まで

お問い合わせください。



ハチドリのひとしずく

3月 24th, 2011

3月11日(金)に発生した東日本大地震で被災された方々に

心よりお見舞い申し上げます。

また亡くなられた多くの方々やご家族の皆様には、心よりお悔やみ申し上げます。


今このときも、不安を抱えながら1分1分を一生懸命生きている方が

どれだけいらっしゃることでしょうか。

あまりに大きな被害、そして失ったものの大きさを思い、

日々飛び込んでくるニュースに、茫然自失となることもしばしばです。


予科練平和記念館がある茨城県も、各地で大きな被害を受けました。

地震や津波による直接的な影響だけではなく、放射性物質により

生産者の方たちにも大きな影響が出ています。

県内の文化財も多数被害が報告され、中でも福島県との県境に位置する北茨城市にあった

日本画家岡倉天心ゆかりの六角堂(国の登録有形文化財)は

丸ごと津波にさらわれてしまいました。

あの美しい風景が今なくなっていることが、にわかには信じられません。

六角堂は海に向ってせり出した高い岸壁の上に立てられているので、

そこまで津波がきたのかと思うと、改めてその力の大きさと激しさを感じます。


地震があったとき、予科練平和記念館にいらっしゃったお客様は全員ご無事でした。

館の職員にもさいわいけがはありませんでした。

館内ロビーの壁面にひびがはいったり、照明がぶら下がってしまったりしましたが

館自体には大きな被害はありませんでした。

資料にも大きな損傷はなく、ほっとしておりますが、被災地の文化財は

大丈夫だったろうかと心配もしております。


予科練平和記念館は今月末まで臨時休館とさせていただいております。

今後の開館スケジュールにつきましては未定ですが、

決まり次第館のHPなどでお知らせいたしますので、どうぞご覧ください。



3月11日を境に、多くの方の生活が一変してしまいました。

この度のことで、あたりまえに続いていくと思っていた日常は、思いもよらない時に予告もなく

大きく変わってしまうのだ、ということをまざまざと思い知らされたように思います。

津波などで大きな被害を受けた地域の方々や、そのご家族縁者の方々の

辛さや苦しさには及びもつきませんが、私も被災した一人として、

このことは一生忘れないと思います。


地震のあと、停電で真っ暗で寒い中、すぐに逃げられるよう服を着たまま

余震におびえながらラジオを聞いて、どれだけ眠れずに過したでしょうか。

「壊滅的被害」という言葉がラジオから繰り返し聞こえてくる中、

さえぎる光のなくなった空にはたくさんの星がまたたいていました。


割れた道路、くずれた屋根瓦や塀。

めちゃくちゃにものが散乱した家の中。

信号がついていない道路の恐さ。

生活必需品が手に入らない大変さ。

電話がつながらない不安。

電気や水のありがたさ。


地震が起きてからただ今までのいろいろなことが、どこか体の奥深くに

刻まれ続けているような気がしています。

今この時も、この先がどうなるのか誰にも分からない状況にありますが、

東京電力福島原子力発電所で作業されているたくさんの方々、

自衛隊、消防、警察、レスキュー、自治体職員、医者、看護士、企業、ボランティア、NPO

海外からの方々、その他たくさんの皆さんが

昼夜をわかたず現地で頑張っていることだけは確かです。

どうかご無事でと、祈らずにはおれません。


震災以来、自分の生活のほどんどが、誰かのおかげで成り立っていたことが

よくわかりました。

こうしてブログを書くことができるのも、「おかげさま」なのだと思います。



数年前、「ハチドリのひとしずく」という絵本が話題になりました。

南アンデス地方に伝わる話を、明治学院大学の辻 信一先生が訳したものです。

それは、こんなお話です。



森が燃えていました

森のいきものたちは、われ先にと逃げていきました

でも、クリキンディという名のハチドリだけは、いったりきたり

口ばしで水のしずくをいってきずつ運んでは

火の上に落としていきます


動物たちがそれを見て

「そんなことして いったい何になるんだ」

といって笑います


クリキンディは こう答えました

「わたしは わたしにできることを しているだけ」


(「ハチドリのひとしずく  -いま、私にできること」 辻信一(監修) 光文社 2005)



ハチドリは、体長10センチほどしかない小さな小さな鳥です。

今改めて、このお話を思い出している方も多いと思います。

クリキンディのように飛び回っている方もたくさんいらっしゃることでしょう。


私も、私にできることを精一杯しようと思います。