ご挨拶

4月 26th, 2012

 今年も桜は見事に咲きました。

 例年と比べ、全国的に遅い開花となりましたが、春の穏やかな日差しの中で桜は忘れることなく咲き誇っています。

 

 この度、予科練平和記念館に着任いたしました。私も「七つボタン」「桜に錨」に代表される予科練ゆかりの地、この阿見町で朝な夕な陸上自衛隊武器学校のラッパ音と共に寝起きして参りました。以来、65年が経ようとしております。

 歴史的遺産の継承、そして命の尊さ、平和の大切さを語り継ぐため平成22年度2月に開館しました予科練平和記念館も早3年目を迎えております。この間、全国各地から多くの方々にご来館をいただき、まことにありがとうございます。ここに深く感謝申し上げます。

 戦後に生を受けた私ですが、この地を強く愛する一人でもあります。

 思い起こせば70年前、少年たちは大空への憧れを抱きながらこの阿見に集いました。筑波山や霞ヶ浦を日々目にしながら訓練に励み、当地を巣立った後は各地で活躍するも、国難に殉じた方も多くおられました。

 その戦争は遠い昔のこととなりました。

 ご来館いただく方々の多くは昔を思い涙されます。本当に、私たちは二度と戦争をしてはならないと思います。そして、平和な時代が永遠に続くためにも、次代を担う子供たちに命の尊さ、平和の大切さを予科練平和記念館で考えてもらいたいと願います。

 

 北に紫峰筑波を望み、豊かな大地と霞ヶ浦の自然に恵まれた阿見町は、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

 ゴ-ルデンウィークには、公園内のツツジも見頃となるでしょう。

 予科練平和記念館へどうぞお越し下さい。

ご訪問者をご紹介します。

4月 24th, 2012

 寒さに遅れがちで、私たちの気を揉ませた桜の開花もわずか1日の気温上昇でパッパッと進み、過ぎてみればこの阿見町でも来年を待たねば桜とは再会が叶わなくなりました。いつもながら、あっと言う間の出来事でした。

 この予科練平和記念館にも多くの桜が植樹されています。開館2周年を過ぎたばかりの当館に似合わしく、まだ小学生というような若木ですが、この1年でもずいぶん大きくなりました。あと数年後にはきっと、阿見町内でも有数の桜の名所になることでしょう。どうぞご期待ください。

 

 この春、多数の方にご来館いただいております。ありがとうございます。

 今回は、そのうちの何組かをご紹介したいと思います。

 去る3月末、まだ桜の蕾も堅い時でしたが、北海道立遠軽高校ラグビー部の皆様にご来館いただきました。

 

 遠軽の近くには北見、網走などの町があります。近年、北見周辺ではラグビー部の夏合宿が盛んに行われることが知られていますが、遠軽高校も過去7回の全国大会(花園)出場を誇り、2010年2011年と北北海道代表として連続出場を果たしている強豪とのこと。旧制中学の例に漏れず、文武両道を果たし多数の逸材を輩出している学校のようです。今回は埼玉県で開催された選抜大会に出場する旅の途中にお立ち寄り下さいました。

 部員の方々は元気溌剌でしたが、礼儀をわきまえ、たいへん好感をもてる「好青年」たちでした。気は優しくて力持ち…、現代でも男の徳目の1つと考えられている価値を体現している人々でした。これからの日本を支える若者に、予科練平和記念館もエールを送ります。

 予科練では「闘球」というほとんどラグビーと変わらない球技が科目としてありました。陣取りゲームの要素をもつラグビーは実戦に似通うと考えられ、チームワークの鍛錬、注意力・突進力の訓練、また犠牲的精神を養うなどのために盛んに行われました。

 遠軽高校ラグビー部が来館された日には、元予科練生の戸張礼記氏(当館歴史調査委員)が居合わせ、一緒に記念撮影となりました。当館にとってもよい思い出の一コマです。

 

 また、つい先日には茨城県知事橋本昌様にもご来館いただきました。近隣へのご出張の合間を縫ってお越しいただき、たいへんありがたく思います。

 橋本知事は歴史にもご関心が高いことを以前何かの機会に知りましたが、ご多忙にもかかわらず、約1時間、熱心にご見学いただきました。

 

 

   私たちは、やがてほどなく戦争を実体験した方々を失い、先人が残してくれた本や映像などでしか学べない時代を迎えます。

 私がこの予科練平和記念館に勤務するようになって改めて考えたことは、私のような戦争を知らない者が、何かをきっかけに実際に戦争、すなわち人殺しを体験し、その結果「やっぱり戦争をしてはだめだ」などと思うようでは、先の戦争で亡くなった方々に申し訳ない、ということでした。

 戦争を知らない者が学ぶことで戦争のない社会を継続させることは、これからを生きる者の最も大きな使命の1つと私は考えています。しかし、生易しいことではないでしょう。それでも最大限に想像力を働かせ、隣人愛の精神をもって、先人が残してくれた偉大な遺産を引き受けなければなりません。

  茨城には予科練平和記念館があるということを多くの方々に知っていただきたいと私たち職員一同は願っています。そのためにも日々、私たちは精進を重ねていきたいと考えています。

 ご来館いただき、何かを感じ取っていただいた方々におかれましても、失われゆく記憶を取り戻す機会の大切さを多くの方にご伝道いただければ幸いに存じます。

所蔵資料展『兄を追って』を開催します

4月 17th, 2012

みなさんこんにちは。

学芸員Wです。

だいぶ暖かくなりましたね。花粉症の方は大丈夫でしょうか。

予科練平和記念館がある阿見町は、今、桜吹雪が舞っています。

館から歩いて5分ぐらいのところにある海軍道路の桜も満開を過ぎ、少しずつ

緑の色が見えはじめました。

 

 

見上げるぐらい大きな木から、花びらが静かにひらひらひらひらと

落ちてきます。

 

 

近くにはたんぽぽも咲いています。

ガクが反っていなかったので、ニホンタンポポでしょうか。

 

水仙も咲いています。

 

 

つくし王国を発見!

恐ろしい密度でつくしが生えています。

きっと来年も同じように生えることでしょう。

王国の繁栄は続きそうです。

 

 

 

館の前の桜も、緑の葉っぱを出す準備にとりかかっています。

 

去年は震災の影響でこんなにゆっくりと桜を眺める時間がありませんでした。

ちょうど今ごろは、館内の修復工事をして再オープンに備えていたころでした。

まだ1年か、もう1年か。

“今”の大切さを改めて思います。

 

 

国の天然記念物にも指定されている福島県三春(みはる)町の滝桜も、

つぼみがふくらんできたようです。

東北にも春が全速力でむかっていますね。

ちなみに、三春町の名前の由来は、梅、桃、桜の春の花が一斉に咲くからだそうです。

自然の大きな摂理にしたがってもくもくと咲く花に、たくさんの方の悲しみが

少しでもいやされますよう、願っております。

 

三春の滝桜

http://www.takizakura.com

 

 

まえおきが長くなりましたが、今日は所蔵資料展のご案内をさせていただきたいと思います。

 4月24日(火)から、「兄を追って」と題しまして所蔵資料展を行います。

 

もし、自分が戦争中に生きていて、兄が予科練に入り、戦地で亡くなったとしたら、

みなさんだったらどうなさいますか。

 

予科練平和記念館には、戦死した予科練生を兄に持つ二人の方から

資料が寄贈されています。

戦後、予科練の兄にゆかりの深い阿見町に住むことを決めた方。

亡くなった兄にかわって家督を継ぎ、潜水艦に乗った兄の戦死の状況を

明らかにしようとした方。

今回はこのお二人の資料ご覧いただき、戦争が普通の家庭にもたらした影響と、

家族の絆を感じていただけたらと思っております。

 

常設展の観覧チケットでご覧いただけますので、ご来館の折にはぜひご覧ください。

 

第5回所蔵資料展「兄を追って

 4月24日(火)~6月24日(日)

9:00~17:00(入館は16:30まで)

予科練平和記念館20世紀ホール

 

予科練の兄と最後の家族写真

 

予科練の兄の小学校時代の自作ノートなど

 

おはなしおさんぽの会ご報告

4月 4th, 2012

喜んだりがっかりしたりを繰り返し

人は自分の心の取り扱い方を学んでゆくのです

 

失望も淋しさも

人間には必要な感情です

 

勇気を出して新しい世界に手を伸ばすのは

「淋しさ」ゆえのこと

 

そうやって人は・・・自分の小さな世界を

赤子のように手を伸ばして

広げてゆくのではないでしょうか

 

(「三月のライオン」 羽海野チカ)

 

みなさんこんにちは。学芸員Wです。

4月になりましたね。

いろんな「新」がはじまって、ドキドキとわくわくと少しの不安が

交じり合って、独特の不思議な雰囲気です。

上のことば、何となく今の時期にぴったりだなと思いましたので、

ご紹介させていただきました。

 

今年度もブログを通じて予科練平和記念館のいろいろを

お伝えてしていきたいと思いますので、

また一年間お付き合いいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

きのう今日と強い風が吹いていますが、みなさんのところは

大丈夫でしたでしょうか。

 

予科練平和記念館の桜も、飛ばされそうになりながらつぼみをふくらませています。

 

 

 

今日は暖かいので、開花がぐっと加速するかもしれません。

 

 

 

さて、先月24日(土)に、絵本の読み聞かせ「おはなしおさんぽの会

&昔の遊びをやってみよう!の会」を行ないました。

 

この日は冷たい雨が降っていましたが、たくさんの方が遊びにきて

くださいました。

 

 

 

大きい絵本はお子さんが大喜びです。

 

 

この日に読んだのは、

『おなべおなべにえたかな?』 こいでやすこ作

『ながーいおはなのブタくん』 キース・フォークナー作

『いのちのまつり ヌチヌグスージ』 草場一壽作

大型絵本『ぼくのくれよん 』 長新太作

の4冊です。

 

どれもとてもいい絵本で、大人が見ても楽しいものです。

解説員Mさんが読んでいるあいだ、お子さんたちは静かに座って、

とってもよく聞いていらっしゃいました。

 

私Wも今回1冊読ませていただきました。

 

たくさんのギャラリー・・・

緊張しましたが、みなさんが一生懸命聞いてくださるのが嬉しくて、

一生懸命読ませていただきました。

 

 

読みきかせの後は、いろんな遊びでみんなで遊びました。

どんぐりこま&どんぐりやじろべえづくりは大人気です。

 

 

おとうさん、おかあさんも熱心に参加なさっています。

つくったやじろべえはおみやげになりました。

 

 

 

 

 

 

お子さんたちの想像力は本当に豊かですね。

 

 

ぬりえをしていた女の子が、私を描いてくれました。

おだんごをのせたような髪型をしていたのを、よく見ていてくれたんですね。

「楽しかったからあげる」と言って、渡してくれました。

 

来てくださった方に楽しんでいただきたいと思っておりましたが、

逆にこちらが楽しませていただき、たくさん元気をいただきました。

ほんとうに、ありがとうございました。

 

次回のおはなしおさんぽの会は、7月7日(土)に行う予定です。

また楽しい企画をしたいと思いますので、ぜひご参加くださいね。

お待ちしております。

 

 

また、純粋に朗読を楽しみたい方のための企画はこちらです。

 

朗読会「加奈の小さなおはなし会」

5月12日(土)13:00~

予科練平和記念館ラウンジ

入場無料

 

元茨城放送アナウンサーで現あみ大使の藤田加奈子さんによる

朗読会です。

大人の方にこそ聴いていただきたいお話を、加奈さんの素敵な声で

お楽しみください。

 

先日Wも加奈さんの朗読会に参加してまいりましたが、胸にしみる

お話を聴かせていただき、思わず涙が出そうになりました。

みなさんにもぜひおすすめします。

耳から広がる物語の世界を、どうぞお楽しみください。

 

2つ目の橋

4月 1st, 2012

 梅が咲かない、桜の蕾もまだ堅い、などと言われていましたが、急に暖かくなってきました。春が来たかな、という気持ちになります。

 先日、彼岸を迎えて昼夜同じ時間になったとき、私は希望を感じました。と言うのも、冬至を過ぎ日一日と昼間が延びることを実感しているときも、朝日が昇ってくる遅さに憤りに近い感情を抱いていたからです。「なぜ6時にもなって未だ暗いんだ?」出勤の準備を暗闇で始めるのはうら寂しいものでした。

  しかし、隠していた頭が引き出されるように夜明けも早まり、自分の起床を窓越しに待っていてくれるその朝の光が頼もしく、また嬉しく感じられるようになってきたのでした。

 これからは昼間が長くなるだけではなく、日々、光が満ち溢れてくるでしょう。明るく、暖かく生きられる喜びを感じるとは、まあ、人間も生き物である証拠でしょうか。冬を越え、予科練平和記念館へご来館いただくお客様の数も増えてきました。ありがたいことです。

 と、こうして3月も末を迎えました。年寄り臭いことを言うようですが、早いものです。つい先日、正月だったような気がします。

 過去1年と別れを告げる新年への橋を私たちはすでに渡っています。この別れの時、そして新しい出会いを迎えるこの時は「2つ目の橋」と言えるのではないでしょうか。

 新年を迎える架け橋は皆一様の方向を向いていると思うのですが「2つ目の橋」は向かう方向が人それぞれなのかもしれません。

 昔、末法の世の到来が信じられ、現在呼び習わされている「浄土式庭園」が盛んに造られた時代がありました。愛憎が蠢(うごめ)く濁(じょく)世、つまり此(し)岸から離れ彼岸、すなわち極楽浄土へ向かう途中にはやはり2つの橋が架けられました。その2橋を結ぶ中島は蓬莱島(夢の島)とも言われ、人々は夢の島に到達すると極楽浄土へ向かうべく「2つ目の橋」を渡ったのです。

 新年を迎えてからのこの3ヶ月に皆さんはしっかりと夢を溜めることができたでしょうか?「2つ目の橋」を渡ろうとする今、行き着く先が幸い多きことをお祈りいたします。

 予科練平和記念館も3年目の飛躍という彼岸へ向けて、勢いよく走り出そうとしています。どうぞ、御期待ください。

 皆様のご来館を心よりお待ちしております。