今日はとても爽やかな風が吹き抜ける予科練平和記念館です。秋風、とこの秋初めて言ってもいいような、たいへん心地よい風が吹いています。この近くで言えば筑波山、少し足をのばせば大子、そして那須、塩原など、山々が紅に染まる様子を思い描ける朝の空気でした。気持ちいい。この言葉以外には何もいらない朝でした。美味しいご飯があれば他には何もいらない、というように。
さて、過ぎる10月22日(土)にレコード鑑賞会を開催しました。
夕方5時の閉館後、人の気配が館内から落ちて静かなホールに、懐かしい音楽が広がりました。
今回ご紹介したのは7曲です。
「蘇州夜曲」 …映画「支那の夜」(昭和15年・1940年)の劇中歌。
「そよかぜ」 …昭和20年(1945年)10月10日、戦後にGHQ(連合国
総司令部)の検閲を通り公開された第1号作品。「そよ
かぜ」は主題歌。
「リンゴの唄」 …映画「そよかぜ」の挿入歌。こちらの方が大ヒットしました。
「愛馬進軍歌」 …昭和14年(1939年)、平時・戦時を通した国民の馬事思想
普及のため、作詞・作曲が募集された歌。
「ヨカレン節」 …昭和19年(1944年)の作品。作曲者は、「決戦の大空へ」
「若鷲の歌」と同じ古関裕而。
「決戦の大空へ」
「若鷲の歌」
最後の2曲は、予科練平和記念館の日常にも馴染みが深いものです。
昭和18年(1943年)9月に封切られた映画「決戦の大空へ」の主題歌、挿入歌で、特に「若鷲の歌」は大ヒットし、予科練の代名詞とも言える存在になりました。映画は土浦海軍航空隊で撮影が行われ、予科練生も多数エキストラとして出演しました。この映画は当時の日本海軍が飛行機搭乗員を募集する目的で予科練によいイメージを持ってもらおうとした性格をもちます。
「若鷲の歌」1番の歌詞をご紹介します。
若い血潮の予科練の
7つ釦(ボタン)は桜に錨(いかり)
今日も飛ぶ飛ぶ霞ヶ浦にや
でっかい希望の雲が湧く
私の母は筑波山の麓に生まれ育った戦前の女性ですが、子ども心に何も分からぬまま若鷲の歌を口ずさんでいたそうです。先日も昔覚えたそのままを私に歌って聞かせました。
飛行機が落ちた、と聞けば友だちと走って見に行ったという終戦頃の生活もあったようです。
このように、歌というものは水が土や岩に染み入るように人の心に刻まれるものなのでしょう。歌詞やメロディーとともに、そこには当時の生活風景も感情もともに織り込まれるのでしょう。
現在のCDで聴く音楽とはまた別のよさがレコードにはあります。音のふくらみ、優しさ、針がレコード盤を引っ掻く音さえ心憎い演出とさえ感じられます。
古いものは淘汰され消えゆくことが多くなっていますが、心の故郷を消す必要はどこにもありません。懐かしい音楽をどうぞ鑑賞に来ていただきたく思います。昔を思い出すことも、昔を想像することも心に元気を満たすことでしょう。
次回は11月12日の土曜日、17時から開催予定です。
皆様のご来館をお待ちしております。